【アフリカ人墓地ナショナルモニュメント】奴隷として連れてこられたアフリカ人の墓地があった場所

ニューヨーク

アフリカ人墓地ナショナルモニュメントは、奴隷として連れてこられたアフリカ人の方々が埋葬されていた場所に造られたモニュメントです。その地に立ち、歴史を知り感じることができる貴重な場所です。

African Burial Ground National Monument(アフリカ人墓地ナショナルモニュメント)

アフリカ人墓地ナショナルモニュメントは、ニューヨーク市ロウアーマンハッタンのオフィス街の中にある国定史跡(ナショナルモニュメント)です。

ニューヨークはアメリカ国内でも奴隷が多かった地域で、このモニュメントがある場所は、奴隷として連れてこられたアフリカ人の方々の遺体が埋葬されていた場所だったそうです。

1991年に政府の建物を建築するための考古学発掘調査の際に、埋葬された400以上の遺骨が発見され、大きなニュースとなりました。学者やアフリカ系アメリカ人の市民活動家などが、この場所の重要性と建設中止を訴え、1993年にアメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されました。

その後、2007年に現在のモニュメント、2010年にビジターセンターがオープンしました。

アフリカ人墓地ナショナルモニュメントの様子

ビジターセンター

ロウアーマンハッタンのオフィス街の中にビジターセンターの入り口があります。知らなければ見逃してしそうな感じです。

入り口で空港のような手荷物検査を受けて入館します。入館料は無料です。ウェブサイトでは写真付きのIDが必要と書いてあったのですが、特に提示することなく入ることができました。

ビジターセンターを訪れるまでは詳しく知らなかったのですが、モニュメントがあるまさにこの場所に長い間400体以上もの遺体が埋葬されていたのです。

下の写真はそれぞれの棺が埋まっていた場所を表しています。100年以上もの間埋葬地に使われていたことから、重なり合うように埋められていたものもあったようです。

それぞれの遺骨の写真が展示されていました。どれもしっかりと人の形で残っていていました。

遺骨はワシントンDCに移送され、調査が行われました。歯の特徴や骨の状態から、奴隷で連れてこられた人の遺骨で間違い無いという結論が出されたそうです。

頭の骨の形から、重労働をしていたということまでわかるのだそうです。

ビジターセンターの中心には、当時の埋葬時を再現した展示がされています。奴隷とされていた方々も葬式のようなものをして棺で埋葬されていたということが意外でした。

今年25セント硬貨に描かれた公民権運動家のマヤ・アンジェロウの言葉と共に、遺骨が発見されてから建設中止、アメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されるまでの記事などが展示されています。

今のニューヨークに当たる場所に初めて奴隷としてアフリカ人が連れてこられたのが1,625年のことです。初めは男性11人だけだったそうですが、その後も続々と男性が奴隷として連れてこられました。

奴隷貿易の時に使われた足枷を再現したものが展示されていました。

1,700年代前半、奴隷として連れてこられたアフリカ人の人口がどんどん増えていきました。

1,700年代には男性の奴隷の反乱を恐れて、より支配しやすい女性や子供が奴隷としてアフリカ大陸から多く連れてこられたそうです。

奴隷としての生活は子供にとっても過酷だったため、墓地で見つかったうちの40%は子供の遺骨だったそうです。奴隷に子供が生まれると、1人目はそのままその家の奴隷に、2人目以降は4〜6歳くらいになると他の家に売られたそうです。

農場で働く奴隷の女性は、農場の仕事に加え家事もしなくてはなりませんでした。その傍ら、街に物を売りに行く機会もあったため、家族と会ったり逃げ出したりする人もいたそうです。

1,700年代半ばには奴隷による反乱などもあり、1,700年代後半には自由になった黒人が奴隷の数を上回ったそうです。

アフリカで使われていた道具や装飾品なども展示されていました。普通に生活していたところから奴隷として強制労働させられるなんてとても考えられません。

ビジターセンター内では、奴隷の生活やその埋葬についてのビデオを見ることができます。下のビデオはビジターセンターで見られるものの一部ですが、ビジターセンターで見られるものは分かりやすい説明に字幕もついていて、理解にとても役立つビデオでした。

ビジターセンターにはお土産ショップやトイレもありました。

ナショナルモニュメント

モニュメントはビジターセンターの裏側にあります。

ここには改葬された遺体が収められています。下の写真は、中から上を見上げたものです。

その横のDiasporaと呼ばれる円形の部分には大西洋の地図が描かれています。

Diasporaの周りにはSankofaと呼ばれるシンボルが描かれています。

Sankofaは、奴隷として多くの人が連れてこられたガーナの言葉だそうです。

ビジターセンターでこの地のことを学んでから見るとより理解が深まります。

まとめ

アフリカ人墓地ナショナルモニュメントは、その場所に実際多くの方が埋葬されていた感慨深い場所でした。大きいものではありませんが、厳かで穏やかな雰囲気があり美しかったです。

ビジターセンターでは、奴隷の歴史や埋葬、墓地から出てきた遺骨の鑑定についてなど学ぶことができます。大人でも知らないことが多く、とても興味深い展示でした。子供には少し難しい部分もあるかもしれませんが、小学生であれば大人が噛み砕いて説明すれば理解できることも多いですし、歴史に興味を持つ良い機会になるのではないでしょうか。

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